ミストの効果で収量アップ
収量アップを実現する飽差による湿度管理
作物の⽣育に影響を及ぼす主な環境要因は、光、温度、湿度、炭酸ガス、気流の5つと⾔われていますが、従来の施設園芸では、温度管理が環境制御の中⼼とされる傾向がありました。
しかし温度管理だけでは収量は増えないことが明らかにされています。
オランダの近代農業技術などから学び、光合成と密接な関係のある葉の気孔を閉じないようにす るための湿度管理が注⽬されています。その中でも相対湿度による湿度管理ではなく、温度を関連させた湿度管理「飽差管理」がより効果的だと考えられています。飽差とは、ある温度及び湿度の空気にあとどれだけ⽔蒸気が⼊るかを⽰した値で、相対湿度に⽐べより作物に影響を与えると考えられています。
⼀般的に適切な飽差値は、3〜6g/m3とされています。飽差値は数値が⼤きいと湿度が低いことを⽰し、値が6以上になると葉は気孔を閉じ蒸散がされなくなり、逆に3以下になると⾼湿度のため、気孔は開いていても植物と空気の⽔蒸気圧差がなくなり、蒸散は起こらず炭酸ガスも吸収できない状態になります。
CO2発⽣機を使⽤していても、気孔が閉じていていたり、蒸散しない環境では炭酸ガスも吸収しません。したがってCO2発⽣機によるCO2濃度管理だけではなく、炭酸ガスを吸収する環境をつくるミスト装置による湿度(飽差)管理との併⽤が収量アップのキメテとなります。
飽差管理の実証データ
⾼知県⼟佐市のピーマン⽣産施設3⽉のデータ
ミスト冷却で⾼温対策
温度は作物の生長、発育のすべての過程において影響を与える環境要因です。夏季の日中のハウス内の温度は40℃を超えることがすくなくありません。高温は草勢を低下させたり、果実の裂果を生じさせたり、栽培を阻害する要因です。さらに作業に従事される方にとっても過酷な作業環境となります。
高温対策には天窓、側窓による換気、被覆資材による遮光、ヒートポンプ/エアコンによる冷却などが行われています。ミストは加湿し光合成を促進する以外に、その細霧が大気中で蒸発するときの気化熱で周りの温度を下げる冷却機能も備えています。
細霧冷房の効果に関しては、多くの試験施設の観測によると、3~6℃温度を下げることが報告されています。またミスト用の加圧ポンプの電気消費量はヒートポンプなどに比べはるかに少なく、省エネのメリットも指摘されています。
天窓や側窓の換気による冷却に加えミスト装置を使用すると、その冷却効果だけでなく、換気による施設内の湿度の低下を補う効果もあります。
冷却効果は気化する水量に比例します。冷却効果を”最大限“に発揮させたい場合は、より多くの水を噴霧、気化させる必要があり、加湿に比べ多くの水量を噴霧する必要があります。したがって冷却用ミストシステムは、加湿用システムに比べノズルの使用数が多くなり、より大きなシステムとなります。
ミスト装置でより高い冷却効果を得るためには、気化率を高める必要があり、そのためにミストで湿度が高まった施設内の空気を循環、換気することが重要となります。
ミストによる高湿度に起因する結露や葉濡れの懸念は、露点温度を理解した温度管理で解消することができます。